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2006.05.18

二ノ宮知子『のだめカンタービレ』

のだめカンタービレたまたまつけたテレビにNHKの「トップランナー」が映し出された。その日のゲストはチェロのチョウ・チンであった。きりりとした目鼻立ちを持つこの中国人チェリストは、インタビュアーの質問に対し、思慮深い佇まいで一つ一つ丁寧に受け答えをしていた。聡明で知性溢れる人であることが一目でわかる。

この時は大萩康司のギターを伴奏にし、ピアソラの「タンティ・アンニ・プリマ」を演奏した。これがとてもすばらしく、画面からまったく目が離せなくなってしまった。天賦の才能と不断の努力によって作り上げられた演奏は、凡夫である私までも高みに引き上げてくれるような気分にさせてくれ、同時に、前へ進まなければという気持ちをも分け与えてくれた。後日、さっそく彼女のCDを買い求めたのはいうまでもない。

野田恵も同じ気持ちにさせてくれる。

彼女は二ノ宮知子『のだめカンタービレ』というクラシック音楽を題材にした漫画の主人公である。「のだめぐみ」だから「のだめ」。幼稚園か小学校の先生を目指すと言いながら、プロのピアニストへの道を着々と進む。天性の自己中心主義とポジティブシンキングに怖いものなど何もない。本人の自覚せぬ上昇気運は、知らぬ間に彼女自身を、そして周りの人間をも巻き込んで、彼ら全員を高いところへ運んでいく。そこにはあざとさがいっさいない。その清々しさといったら。だからこそ指揮者での成功を目指す千秋真一とのコンビが笑えるのだろう。完璧主義の王様と自堕落な女王様。ああ、偉大なるアウフヘーベン。

自己の発見は進むべき道の発見でもある。少しずつ自分のことに気づき始めたように見えるのだめは、連載開始当初のような天然そのものという印象が薄れてきはしている。おそらく「のだめ」のサクセス・ストーリーを無邪気なおとぎ話以下に貶めないための方策なのだろう。「のだめ」が「のだめ」のまま、「未来のアルゲリッチ」にならんことを!

マングース二ノ宮知子はあまたのクラシック演奏会の放送や映像を研究しているとおぼしい。コマの展開の仕方があたかもそれを見ているかのごとき印象がある。音が流れてくるというのはいいすぎだろうか。少女漫画というカテゴリーを意識する必要はない。クラシック音楽を題材にした一級の娯楽作品である。見事にエンターテイメントしている。読むものに不思議な高揚感と幸せな気分を与えてくれる。

むきゃー
ぎゃぼー

のだめの叫び声である。なんとなく同じ声を叫びたくなる。のだめにはなれないけれど気分はすっきりする。来月出る予定の新刊限定版付録は、のだめの来たマングースの着ぐるみぬいぐるみだ。なんというおまけ!!

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コメント

各コミックの巻末に取材協力者のことが書かれていますが、作者自身が元学生オケ団員であったのは知りませんでした。おっしゃるようにしっかりした下調べ(こだわり)があるからこそ「歌うように描く」ことが可能なんでしょうね。まさしく「神は細部に宿る」と思わされます。のだめと千秋の欧州での活躍が楽しみ〜。

投稿: morio | 2006.05.20 01:16

「KINO」(という京都精華大発行の雑誌)のインタビューで作者が言ってましたが,やっぱり,「オケの編成を調べて曲によっていちいち人数を変えたり,楽譜を見てどこでなにが鳴ってるかをたしかめたり」してるそうです。さすがー。
単にスナップショット的に情報として正しい,というだけでなく,音楽に対して愛がありますよね。作者本人がこの曲のここを見せたい(聞かせたい)!というのがヒシヒシと伝わってくる。こういう手抜きのないコダワリと追求が,思わずゾクッとする鳥肌の立つ感動を呼ぶのだと思います。
ご自身,元・学生オケ団員だったというだけあって,「ホルン,もっと小さく」とか「今日はリードを削らなきゃいけないんで・・・」とか,かなりリアルな(というかマニアックな)オケネタもステキ(笑)。

投稿: ぽた郎 | 2006.05.19 00:34

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