嫌われ松子の一生
不幸せのファンタジー。不幸を娯楽化したらこうなるというお手本のような映画であった。しかし、そもそも不幸とはなんなのだろう。貧乏であることか。就きたい職につけないことか。他人のせいで裏街道に追いやられることか。望み通りの人生を送ることができないことか。
不幸のどん底に叩き落とされた松子の姿にどこか幸福感が漂っているのは、彼女が人生の岐路(あまりにも多すぎて、まるであみだくじだ!)において、いつも主体的に人生を選び取っているからではないのか。そうした主体性が彼女をして決定的に不幸からは遠いところへ連れ去っている。売れない作家と同棲し、ソープ嬢になり、殺人犯になり、やくざの愛人になり、最後は身を持ち崩して引きこもる……。上映後に感じる意外なまでの爽快感は、松子の生きるエネルギーに溢れた「前向きな不幸」によるものであるのは間違いないだろう。No.1ソープ嬢になるために明けても暮れても懸命にスクワットをする松子の姿こそ、彼女の生き方を象徴的に現している。
中島哲也監督はドラマチックすぎる松子の一生を、あたかもディズニー映画か宝塚歌劇かというようなド派手な演出で彩っていく。スクリーンに明滅する強烈な色彩、効果的に挟み込まれるCGとアニメーション、物語と密接な関係を持つ魅力的な歌曲群、一歩間違えば悪趣味、自己満足の謗りを免れないような演出が、どれも見事にプラスに働いている。相当個性的であった前作「下妻物語」をも、その面では完全に凌駕しているといえよう。もちろん松子を演じる中谷美紀をはじめとして、個性的すぎる俳優陣の熱演は、いわずもがなである。これまで小綺麗なだけで印象の薄かった中谷美紀、もしかすると一世一代の演技かもしれない。
インパクト大。いや、特大。好き嫌いはきっと分かれる。画面から溢れかえるエネルギーを存分に味わい尽くしたい人に。ワーナーマイカルシネマズ茨木で鑑賞。
公式サイト http://kiraware.goo.ne.jp/
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コメント
筋金入りのファンですか! さすが鉄骨好きだけのことはあります(違う)。ちなみにオサーンの私は、もう座って聴くライブしか行けなくなりました。疲れてダメ……。
投稿: morio | 2006.06.18 03:42
えーと、全部のアルバム持ってます!
最高にかっちょいいgrooveで歌も上手。
ライブも行きますよ〜ん。
この映画の曲のビデオクリップもいいっすよねぇ〜。
投稿: しきはん | 2006.06.17 20:57
>しきはん
そこに食い付きましたか。そういえば最近新しいアルバムが出てましたよね。「ものすごく」というからには、すでに脳内ヘヴィーローテーション?
投稿: morio | 2006.06.16 13:21
EGO-WRAPPIN'がものすごく好きです!
投稿: しきはん | 2006.06.16 01:57