美しいものは好きですか
高いところに登っては、そこから針穴写真を撮っている。非日常的風景が独特の美しい文様となって浮き出る様を楽しんでいる。これは札幌テレビ塔から大通公園を撮影したもの。2006年の雪まつりが閉幕した二日後のものである。
その札幌テレビ塔には設計者を同じくする兄弟が日本各地に存在する。すなわち名古屋テレビ塔、通天閣、別府テレビ塔、東京タワー、博多タワーがそれである。『タワー』(INAXギャラリー、2006年6月)は、内藤多仲が設計したこれらの塔のうち、東京タワー、通天閣、名古屋テレビ塔の歴史や裏話を紹介する。写真も満載で見て読んで楽しめる一冊である。この夏は東京タワーか通天閣から写真を撮ってみたい。
発想の転換で驚くべき視点を得た『原寸美術館』(小学館、2006年7月)に日本編が登場した。監修者は現代日本画の第一人者である千住博であり、どの作品にも読み応えのある解説が付されている。何より肝心の絵の印刷が極めて美しく、画家の筆遣いと息づかいがあたかも目の前に立ち現れるかのようである。それはまさに「原寸」のものしかなし得ないものであろう。
きままに街中の子供を写真に収めるのが難しい世相である。そんなことを以前子供をテーマにした写真集のエントリーで書いたことがあった。『内なるこども』(青幻舎、2006年3月)は、2006年4月に愛知県豊田市美術館で開かれた同題の展覧会に関連し出版されたものである。内外新旧の写真家、画家、美術家による「子供」をテーマにした作品が収められる。無邪気、無垢の存在として類型化された子供観を大きく裏切ってくれる意外性に満ちている。とても刺激的である。
おもしろおかしい仏像解説本といえば、みうらじゅんやいとうせいこうのものがよく知られている。山本勉『仏像のひみつ』(朝日出版社、2006年6月)は難しいことをたいへんわかりやすくまじめに解く良書である。読んでいて目から鱗がぼろぼろと落ちる。自分の蒙昧無知ぶりが恥ずかしくなるほどに。小中学生対象の仏像展覧会の内容がもとになっているという。丁寧に丁寧に語りかける文章は、「おじいちゃんが可愛い孫に語りかける口調」を思い起こさせる。イラスト、写真も満載で楽しい。



最後にあと2冊。私の好きな女性写真家二人が、図らずも同時期に新書を刊行した。蜷川実花『ラッキースターの探し方』(DAI-X出版、2006年7月)と川内倫子『りんこ日記』(FOIL、2006年7月)である。蜷川の本は、彼女自身が半生を振り返る内容で、意外に知られていない「蜷川家」の裏側をうかがうことができる。天才特有の不遜さがかえって心地好い。川内の方は彼女のサイトで公開されている日記がそのまま一書に編まれている。「川内倫子」の名を外せば、そこらに転がっている誰かのブログと見分けがつかないほど、平々凡々とした日々の記録が続いている。作品を撮るローライとは違う携帯電話による写真が興味深い。
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